はじめに

2025年4月より、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT/FIP)に基づくバイオマス発電事業者に対して、GHG(温室効果ガス)排出量の報告が義務化されました。これは、発電時のみならず、**燃料調達から輸送、使用に至るまでの全体的なライフサイクル排出量(LCA)**を把握・管理することを目的としています。

本記事では、制度の概要と、バイオマス発電所の担当者が今すぐ取り組むべき準備事項についてわかりやすく解説します。

義務化された内容の要点(2025年4月施行)

項目内容
対象事業者FIT/FIP制度に基づくすべてのバイオマス発電所
報告対象燃料ごとのGHG排出原単位、発電所での年間排出総量(t-CO₂)
提出先一般社団法人 再生可能エネルギー推進機構(REPO)など(※予定)
提出頻度年1回(燃料使用実績に基づく)
報告フォーマット経済産業省エネルギー庁の指定様式(Excel/PDF)

GHG排出量の算定方法:何をどう計算するのか?

GHG排出量は、次のようなライフサイクルベースで評価されます。

  1. 燃料の採取・伐採
  2. 集荷・加工
  3. 輸送(国内外)
  4. 発電所での使用(燃焼)

それぞれに対して、経産省が指定した**排出原単位(g-CO₂/MJ)**を使用し、以下のように計算します。

plaintextコピーする編集するGHG排出量(t-CO₂) = 燃料使用量(t) × 発熱量(MJ/t) × 排出原単位(g-CO₂/MJ) ÷ 1,000,000

担当者が今すぐ着手すべき準備

1. 使用燃料の明細を整理

  • 燃料の種類、調達元、数量、納入日などを伝票や納品書ベースでデジタル化しておきましょう。
  • 国内産/輸入、森林由来/建築廃材なども区分する必要があります。

2. 輸送経路と距離の把握

  • 燃料供給元から発電所までの**距離(km)や輸送手段(トラック、船など)**の情報を記録。
  • GHG排出量の算出に必要な重要情報です。

3. 管理ツールの導入検討

  • Excel管理でも対応可能ですが、GHG自動計算機能付きのクラウド型ツール(例:バイオマス伝票管理SaaS等)の導入で大幅に省力化できます。

4. 森林認証・燃料証明書の整理

  • 認証取得済みの木材か否かで、報告時の区分が異なります。
  • 「SGEC」「FSC」「PEFC」などの証明書類を確認しておきましょう。

5. 年間報告のスケジュール確認

  • 年1回の提出に向け、毎月の記録管理が推奨されます。
  • 提出期限や前年報告との整合性に注意。

最後に:報告義務化はリスクではなくチャンス

GHG排出量の見える化は、単なる義務ではなく、事業の透明性や環境価値を高める絶好の機会でもあります。
今後、JクレジットやGXリーグ等との連携により、排出削減量を「価値化」する動きも進んでおり、しっかりとしたGHG管理体制は企業価値の向上にもつながります。

ご相談受付中

弊社では、GHG排出量の記録管理から報告書の作成支援まで、バイオマス発電所向けに一貫してご支援しております。
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