2025年4月から義務化:バイオマス発電所に求められるGHG排出量の報告とは?(実務編)

前回の解説では、GHG排出量の概要についてまとめました。今回は、具体的な実務上での計算方法について解説いたします。
バイオマス発電における温室効果ガス(GHG)排出量の計算は、再生可能エネルギーの環境影響を評価するために重要なステップです。実務レベルで具体的にどのように計算すべきかについて、以下のように進めていきます。

1. GHG排出量のライフサイクルアセスメント(LCA)とは

バイオマス発電におけるGHG排出量は、ライフサイクルアセスメント(LCA)を使用して評価されます。LCAは、原料の調達から発電までのすべての工程を通じて発生する温室効果ガスの排出量を算出する方法です。このプロセスには以下の段階が含まれます。

  1. 原料の調達(伐採や農作物の残渣の収集)
  2. 輸送(燃料が発電所まで輸送される距離と方法)
  3. 燃料の加工(チップ化や乾燥など)
  4. 発電(燃焼によるエネルギー生産)
  5. 廃棄物処理(灰や残留物の処理)

これらの各工程におけるGHG排出量を合算して、総排出量を算出します。

2. GHG排出量の計算方法の具体例

2.1 原料調達のGHG排出量計算

バイオマス燃料の原料調達(例えば木材の場合)におけるGHG排出量は、伐採搬出輸送の各プロセスに関わる排出を計算します。

例:間伐材を使う場合
  • 伐採:伐採によるCO₂排出量は、1トンの木を伐採した際に放出されるCO₂量を基に計算します。一般的に、1トンの木を伐採すると、約1.3トンのCO₂が放出されると言われています。
  • 輸送:間伐材を発電所まで輸送する距離や手段(トラック、鉄道など)によって排出されるGHG量を計算します。例えば、1トンの木材を100km輸送する場合、0.1トンのCO₂排出が見込まれる場合があります(輸送手段によって異なる)。

これらを加味して、原料調達時の総GHG排出量が算出されます。

2.2 燃料加工と発電のGHG排出量

加工プロセス(木材チップ化など)および実際の発電で発生するGHGを計算します。発電所での燃焼によるCO₂排出量は、発電効率や燃焼技術により変動します。

例:バイオマス発電のCO₂排出量
  • 発電効率:例えば、バイオマスの発電効率が30%である場合、投入された燃料のエネルギーのうち30%が電力として利用され、残りのエネルギーは熱として失われます。
  • CO₂排出量:バイオマスの種類(木材、農作物残渣など)によって燃焼時のCO₂排出量は異なります。例えば、1トンの木材が燃焼されると約1.7トンのCO₂が排出される場合があります。

3. 具体的な計算手順

実際にGHG排出量を計算する際のステップは以下の通りです。

3.1 ステップ1: 燃料の選定と調達方法の確認

バイオマス燃料の種類(木材、農作物残渣、パーム油など)を選定し、その調達方法(伐採、収穫、購入など)を確認します。

  • :間伐材やチップ化された木材を使用
      発電所までの輸送方法(トラック、鉄道)

3.2 ステップ2: 排出係数の適用

各プロセス(伐採、輸送、加工、発電)の排出係数を適用します。排出係数は、CO₂やメタン(CH₄)、亜酸化窒素(N₂O)などの温室効果ガスが排出される量を示すもので、燃料の種類やプロセスに基づいて計算されます。

  • :伐採で1トンの木材あたり1.3トンのCO₂
      輸送で1トンの木材を100km輸送した場合、0.1トンのCO₂

3.3 ステップ3: 全工程のGHG排出量を算出

原料調達から発電までの各段階で排出されるCO₂を合算し、総GHG排出量を算出します。

  • :伐採(1トンあたり1.3トンのCO₂)
      輸送(100kmあたり0.1トンのCO₂)
      発電(1トンの木材あたり1.7トンのCO₂)

3.4 ステップ4: 排出量の削減方法を提案

GHG排出量の削減には、燃料の効率的な利用や技術的な改善が重要です。例えば、高効率な発電機の導入、より短い輸送距離の確保などが考えられます。

4. 実務での活用方法

バイオマス発電事業者は、上記の計算方法を基に、定期的に自社のGHG排出量を評価し、削減計画を策定することが求められます。具体的には、次のような取り組みを行うことが一般的です:

  • 定期的なGHG排出量の監査:発電所内外で発生する温室効果ガスの排出を定期的に監査し、計算結果を文書化。
  • 排出削減プランの策定:事業者は、排出削減目標を設定し、達成に向けた技術的・運用的改善を行います。
  • 透明性の確保:排出量データを公開し、ステークホルダーに対して透明性を確保。

5. まとめ

バイオマス発電におけるGHG排出量の計算は、ライフサイクル全体を通じて行われるべきです。実務での計算方法は、原料調達から発電までの各プロセスで発生する温室効果ガスの排出量を正確に算定し、削減策を講じることが求められます。政策の進展に伴い、バイオマス発電事業者はより高い透明性と環境負荷削減を目指す必要があります。
logchipでは、既存の資料(紙の計量票やバイオマス証明書など)からこのGHG排出量を自動計算する機能を提供しています。職場までご訪問させていただき説明することも可能ですのでお気軽にお問い合わせください。